伝わる温度

伝わる温度

階段の上で思いっきり背伸びをして、上の方の本を取ろうとした。

けれど、無理な取り方をしたのともともと本が傾いていたことで、
大きな本が数冊落ちてくる。

千紘
「きゃっ」


「千紘っ」

衝撃が来ると思い、とっさにしゃがみこむ。
その私の上に、柊さんが覆いかぶさった。幾度かの音と衝撃。

千紘
「あっ」

柊さんが私の頭を胸元へと、抱きこむように寄せる。
胸に頬が押しつけられた。

千紘
(柊さん、私をかばって……)

熱が直に伝わってくる。守られていることに胸が熱くなっていった。


「くっ」

衝撃に耐えるように、低く呻く声が伝わってくる。

千紘
「ッ!」

千紘
(どうしよう。ケガしちゃう)

それを心配して身じろごうとすると諌めるように
私への拘束が強くなるのだ。
柊さんは動かずに、ひたすら私をかばい続ける。

千紘
(どうか、柊さんがケガしませんように)

ようやく本の落下が収まると、すぐに柊さんが私の両腕を握って
顔を覗きこんできた。


「大丈夫か?ケガしてないか?」

千紘
「はい。私は大丈夫です。それよりも、柊さんが」


「俺は平気だ。あ、本が」

千紘
「大変」

私はすぐに拾い集める。


「もっと気をつけろよ」